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英国王のスピーチ 映画レビュー

人前でしゃべらなければならない人の苦悩


泣ける度★★★★☆ オススメ度◎◎◎◎◎
英国王のスピーチ
監督 トム・フーパー
脚本 デヴィッド・サイドラー
製作総指揮 ジェフリー・ラッシュ、ティム・スミス、ポール・ブレット
マーク・フォリーニョ 、ハーヴェイ・ワインスタイン 、ボブ・ワインスタイン
音楽 アレクサンドル・デスプラ


【映画解説】 公式サイトはこちら⇒
幼いころから吃音というコンプレックスに悩む英国王ジョージ6世が
妻の愛情や型破りのセラピストなどの周囲の力を借りながら克服し
国民に愛される強く優しい王になるまでを描く実話に基づく感動ストーリー。


【映画レビュー】
人前でしゃべるのは、それ相応の訓練を積まないと難しく
誰にでもできることじゃない
人前でしゃべるのが苦手な人は
あえて人前に出るのを避ければいいと言えばいいのだが
立場上どうしても人前でしゃべらない訳にはいかない人も
世の中にはたくさんいる。

例えば、どこの会社でも会議なので必ず必要になる
プレゼンテーション
たかだか10数人の会議でさえ
説得力を持って流暢にしゃべるのは
それなりの練習や経験を積まないと難しい。
ましてや英国の全国民が聞いているラジオ放送で
しかも吃音症というハンデを背負っている国王が
説得力のあるスピーチをするとなると
もうこれは限りなく不可能に近い作業だ!
だがそんな難事業を
ジョージ6世とひとりのオーストラリア人治療士が
成し遂げる物語がこの『英国王のスピーチ』だ。

本年度のアカデミー賞で
作品賞、主演男優賞、脚本賞、監督賞の
4つのオスカーを獲得した評価は
映画を観れば誰もが納得いくはず。


ひと口に吃音症といってもその原因は様々で
治すには何故そうなったか?を知るために
患者の生い立ちとか、幼少期のできごとなどを
探っていかなければならないようだ。
本作で、幼いころのことを聞く言語療法士のライオネルに
あまり語りたがらなかったジョージ6世がついに心を開き
少年期に父親から愛されなかった寂しさ
利き手や脚の矯正などを受けた抑圧
それ故、父の知らないところで乳母からいじめを受けて
自分だけ食事を与えられなかったことを父に言えなかったこと
など彼の心の奥のある種の怒りをライオネルに語るシーンは
思わず目頭が熱くなる。

小学校のころ、私のクラスにも
首が傾いてまっすぐにしていられない子がいたが
その原因も父親が厳しく怒り過ぎて
怖くて父の方を見ることができず
曲がってしまったらしい。
幼い時のガラスのような心には
大人たちが気にも留めないそうした心ない行為が原因で
深く傷つき、身体の変化として現れてしまうことも
少なからずあるようだ。

私たちの知る有名人の中にも未だに
チック症や顔面神経痛のような症状を抱えた人がいるが
もしかしたらその人たちの症状も
幼い時のそういった出来事に起因しているのかもしれない。


兄の退位で仕方なく即位したジョージ6世だが
第一次大戦が終結したとはいえ
世界的不況は続き、ヒトラーがドイツの政権を掌握して
ファシズムの嵐が吹き始め
即位した年にスペインの内戦が勃発し
第二次世界大戦に突入していきそうな
英国民にとってはいちばん不安な時代。
そんな国民たちを勇気づけ、奮い立たせるのは
他ならぬ英国王のスピーチなのだ!
だからこそ苦手な人前でのスピーチも
勇気を振り絞り、自分を奮い立たせて
しゃべらなければならず
英国王というプライドを捨て
吃音症を克服できるように
ひとりのオーストラリア人に頼ることを決断する。


映画全体に漂う英国王室の歴史やプライドを感じさせる
独特の雰囲気や数々のユーモア
如何にもイギリス舞台演劇出身の上手さを魅せる
“コリン・ファース”(ジョージ6世)の英国人ぶり
彼を支える妻のエリザベスを演じる
“ヘレナ・ボナム=カーター”の母親的献身さも
癖のあるオーストラリア人言語療法士ライオネルを見事に演じた
“ジェフリー・ラッシュ”も観ていてすべて安心し納得できる。
さぞかし年季の入った大監督の作品かと思いきや
若干38歳のトム・フーバーという若手監督の演出と聞いて
改めて驚かされた。

劇中、治療士の資格を持っていないライオネルを
お払い箱にし、自分の知っている医者を
ジョージ6世に勧める大司教コスモ・ラングが
ライオネルに向って言う台詞
「ここはウエスト・ミンスターですよ!」という一言が
いかにも英国の階級社会を象徴しているが

この映画がアカデミー作品賞を始め
4つのオスカーを獲得したのは
題名どおり英国王の事実を基にした物語だが
特別な立場の人間の世界を描いているのではなく
身分を超えたひとりの患者とそれを治療してくれた
人と人の心の交流を描いた
友情物語になっているからだろう。

同じ島国なのに似ているようでまったく違う
日本とイギリスの違いを
ちょっと垣間見られるという意味でも
日本人のみなさんには
ぜひ観ていただきたい秀作映画だ!





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最新映画レビュー

ヒア アフター 映画レビュー

死者たちに恥ずかしくないように生きる!


泣ける度★★★☆☆ オススメ度◎◎◎◎◎
ヒアアフター
監督 クリント・イーストウッド
脚本 ピーター・モーガン
製作総指揮 スティーヴン・スピルバーグ、フランク・マーシャル
ティム・ムーア、ピーター・モーガン
音楽 クリント・イーストウッド


【映画解説】 公式サイトはこちら⇒
死を身近で体験した3人の登場人物が、それぞれの体験から悩み苦しみ
あらためて生と向き合う姿を描くヒューマン・ドラマ


【映画レビュー】
人は死んだら何処へ行くのだろう?
誰もが思う素朴な疑問だが
死後の世界を信じる人もいれば
死んだら終わり、そんな世界など無い
と思う人もいると思うが
本作のワンシーンにもあったように
どう考えても守護霊に守られたとしか思えない体験を
何度かしている私は、死後の世界を頑なに信じている一人だ
そして、亡くなった人たちに恥ずかしくないように
今いる世界を精いっぱい生きることが
自分を守ってくれている霊たちへの
自分ができる精一杯の生き方なのだと
この映画を観て確信し、同時にそれが
イーストウッド監督からのメッセージなのだと感じた。


本作の主人公たちは皆、なんらかの形で死と関わりを持っている
津波に巻き込まれ臨死体験をしたキャスター
双子の兄を亡くしたショックから立ち直れないでいる少年
ある事故をきっかけに霊媒師として死者と語ることができる男
そして、それぞれが自分の中に
そんな体験をした者にしか解らない
ある種のわだかまりを抱えている。
そしてそんな思いを解放してくれる何かを求めている。
だが本作は『ヒア アフター』という題名どおり
死後の世界を題材にしてはいるが
オカルト的な表現は一切出てこない。
むしろ“今をどう生きるべきか?”を観客に問う
生き方をテーマにした映画だと思う。



私は6年前に母を亡くしたが
それまでは死にたくないと思って生きていたのに
母の死をきっかけに
母の傍に行けるのならばいつ死んでもいいや
という思いに変わってしまった。

こんなことを言うと妻や子供たちに申し訳なく思うが
最愛の母を亡くしてから何をやってもやる気が起きず
生きることに張りあいを失くし
それまで勤めていた会社も辞めてしまった。

それほど母の死は自分の人生において
大きな出来事だった。

だが、それからいろんな面で人生が思うようにいかず
自分がやりたいことが出来ぬまま月日が経ち
母の死後めっきり弱ってしまった父も
昨年、他界してしまった。

そんなとき、初めて夢の中に母が現れた
それまで一度も出てきたことはなかったので
「なんで今まで会いに来てくれなかったんだよ!」と
夢の中で私は母に文句を言った。
死に目に会えなかった後悔の念もずっと抱いていたので
そんな言い方になってしまったのだが
夢の中の母は何も言わずに心配そうに
黙って私をじっと見つめていた。
目覚めたときに私は泣いていた
夢の中の母が笑ってくれずに
ただ黙って心配そうに私を見ていたことに
情けなさと、悔しさと、済まない気持ちが入り混じった
何とも言えない涙だった。

それから私は生き方を改めようと思った
「いつ死んでもいいや」という思いは捨て
「生きている限り精一杯生きよう」と
次に母が夢に出てく来てくれるときは
笑顔で出て来てくれるように
あっちの世界に行った母を心配させないように
そう生きることを心に誓った。


人は後悔ばかりして生きていると
マイナスのフォースを呼び
運気も下がってしまうような気がする。
宗教的な考え方には、この世は修業の場で
生かされている間は一生懸命努力しなければならない
その修業を終えたときに初めてお迎えが来るのだという
考え方があるようだが
死後の世界があるとすれば
自分を守ってくれているご先祖様の霊も含め
亡くなった人たちを心配させるような生き方を
してはいけないのだと
自分自身に言い聞かせながら
日々の生活を送るように努力している。


おりしも一週間前の大地震により
この映画以上の大津波が東北地方沿岸を襲った。
日が経つに連れその被害の甚大さは
我々の想像をはるかに超えたものとなっている。
亡くなった方々の数も計り知れない。
でも、どんな逆境に立たされても
生き残った人たちには、生き残った理由があるはず
亡くなった人たちを心配させない為にも
潰れそうな心を奮い立たせて
頑張って生き抜いて欲しい!と願っている。


※P.S
現在、この映画は被災者の方々を気遣ってか
上映が中止されてしまった。
この映画の津波シーンがあまりにもリアルなため
いたしかたない処置だとは思うが
1日も早く町も映画館も復興し
心に傷を負った方々が元気になるような映画を上映して欲しいと思う。






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