プレシャス 映画レビュー

この映画が本当に伝えたかったこととは?



泣ける度★☆☆☆☆ おススメ度◎◎
プレシャス

監督 リー・ダニエルズ/脚本 ジェフリー・フレッチャー/原作 サファイア
製作総指揮 オプラ・ウィンフリー、タイラー・ペリー、リサ・コルテス、トム・ヘラー
音楽 マリオ・グリゴロフ



【映画解説】
ハーレムを舞台に、過酷な運命を生きる16歳のアフリカ系アメリカ人少女
クレアリース“プレシャス”ジョーンズの人生を描く人間ドラマ
著名人から絶賛された「プレシャス(原題:PUSH)」の映画化



【映画レビュー】
Yahoo映画のレビューを見ても割と高評価な『プレシャス』
ただ、この映画はいったい誰に何を伝えたかったのだろう?


主演のクレアリース“プレシャス”ジョーンズは
ハーレムで生まれ実父と義理の父による近親相姦で2度も妊娠をさせられ
母親からは精神的にも肉体的にも虐待を受け
読み書きすらできずに
学校では誰とも口をきけないで過ごす16歳の女の子

と、ここまででも相当暗く重い映画になりがちだが
それを救っているのが随所にインサートされる彼女の妄想シーン!
過酷な現実から逃避するように
夢の中の彼女はとても幸せで明るい

アカデミー賞に何部門もノミネートされたのは
本作が2作目の監督作品というリー・ダニエルズの
そういった演出的手腕によるところだろう



オープニングの引用「すべては宇宙からの贈り物である」
ラストの監督からのメッセージ「すべてのいとしい女の子たちへ」

この二つのメッセージとこの映画を私なりに解釈すると
たとえどんなに苛酷な逆境に立たされても
愛は、前を向いて生きてゆく強さを与えてくれる
と、いったところだろうか…?

でも私が知りたかったのは、この母親“メアリー”は
どんな境遇で育ってきたのか?だ


このアダルトチルドレンの典型ともいえる母親の過去はこの映画には出てこないが
けして良い子供時代を過ごしてはいなかったのだろうと、だれもが想像できる
それほど実娘を虐待し続けるのだ


舞台は一番荒れていたと言われる1987年のハーレム
アメリカの人種差別が生んだ格差社会の巣窟
“プレシャス”に学校で学ぶことへの無駄を言い続け
「おまえはただ食事をつくってりゃいいんだよ!」と罵倒し
ダウン症のプレシャスの長女を祖母に押し付け
その生活保護で自分がのうのうと暮らし
その手当が途切れないように
「学校なんか行かず、外出は役所へ行くだけにしろ!」と指図するこの母親も
きっと、まともな教育を受けて育ってはいないことは想像に難くない

自分も教育を受けていないから字も読めずまともな職にも就けない
白人を憎み、初めから人生をあきらめ、努力することを放棄し、
実娘を家政婦代わりに使い、彼女の未来を親が自ら閉ざす。


この映画を見ていて思い出したことがある
1970年頃のNYのハーレムを見てきた私の大学時代の恩師が
「彼ら(黒人)は働かないで一日中ただ何もしないで過ごす
掃除もせずに床が汚れたらそこに新聞紙を敷くだけ
という生活をしている」と語っていたが
今思えば、働かないのではなく
働きたくても働く場所がなかったのではないか?
明日への希望が見えず、生きてゆく術が見つからなかったのでは?
徹底的な人種差別が生み出した格差という弊害が連綿と続き
アメリカの至る所に本作のような環境を作ってしまったのでは?



チャンスの国アメリカで
そのチャンスの糸口も見えないほどの辛く貧しい境遇
我々日本人の想像をはるかに超えた有色人種への差別
この映画が伝えたかったのは
“希望を捨てずに生きてゆくことのたいせつさ”だけではなく
アメリカという国で実際に起こっている
人種差別が生み出した格差社会への問題提起なのでは?




この映画から20年以上経ったアメリカでは
黒人を始め有色人種も
努力次第でそれなりの地位を獲得できるようになり
昨年、米国創立以来はじめて黒人の大統領が誕生した。

だが、人種差別は依然として、場所を中東に移し
アメリカ人と○○○人というカタチで続いている

そんなアメリカに愛を語る資格はあるのだろうか?
と、少し憤りも覚えた映画だった…



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