告白 映画レビュー

本当の犠牲者と真の加害者とは???


泣ける度☆☆☆ オススメ度◎◎◎
告白
監督・脚本 中島哲也/原作 湊かなえ


【映画解説】
2009年本屋大賞に輝いた湊かなえの同名ベストセラー小説を
『下妻物語』『嫌われ松子の一生』『パコと魔法の絵本』の中島哲也監督がメガホンを取り
教え子にまな娘を殺された中学校教師の復讐(ふくしゅう)を描く衝撃のミステリー



【映画レビュー】
この作品を原作を読まずに観た人は
かなりショックだったに違いない

原作の小説も『告白』というタイトル通り
登場人物が本心を赤裸々に語っているため
かなりリアルな心理描写と残酷シーンがショックなのだが
映画はそれをじかに映像で目の当たりにされるため
映画から観た人はインパクトが強すぎるかも知れない

日本天然色映画のCMディレクター時代から
映像にかなりのこだわりを持っていた中島哲也監督
映像に関しては一切妥協しない彼の演出が
この作品をより一層インパクトあるモノに仕上げている。

原作通りいきなり子供を生徒に殺されたと語り出す
長い長い告白から始まる本作だが
誰もが理由もなく殺された森口悠子(松たか子)の娘
愛美(芦田愛菜)がいちばんの被害者だと思うだろう
だが、この物語の本当の犠牲者は
加害者である少年Aこと“渡辺修哉”なのではないか?
そして真の加害者はその母親ではないのか?

『プレシャス』でもそうだったように
物心ついた子供にとって最初の判断基準は親である。
子供に善と悪の倫理観を教えることが
親が最もしなければならない大切な仕事なのだ

世の中にはわが子を虐待する親のニュースがよく流れるが
そんなニュースを聞くたびに“いじめ”の連鎖反応を疑う

親が愛情をいっぱいに注いで育てた子供は
人を愛する事の大切さを学ぶ
それは頭で学ぶのではなく心が学ぶのだ
口でいくら褒めて育てても
心が伴わなければ子供はすぐに見抜く

親が何気なくしている小さな仕草の一つ一つまで
子供はじっと観察し見ているものだ
子供にとっては今いる小宇宙しか学ぶものはないのだから
その中で必死にあらゆることを吸収していく
そうした一連の生活の中の出来事で
子供の中に自然と善悪の基準が出来上がっていく

人の悪口を平気で言う親に育てられた子供は
人の悪口は悪くはないという基準を自分の中につくるだろうし
道端に平気で痰や唾を吐く親に育てられた子供は
痰や唾を道端にはくことは悪いことではないという基準が自分の中に出来上がる
親に理由もなく叩かれたり殴られて育った子供は
理由もなく他人を叩いたり殴ったりする事に何の抵抗もなくなる

生活の中で日常的に繰り返される行為は
その人の心にその行為に対する基準を作っていく

本作の渡辺修哉の人格は
幼いころに理由もなく母親から受け続けた暴力と虐待
でも成績がいいと抱きしめられ褒められるという
子供からしてみれば訳が解らない矛盾した行為
そしてその結果できあがった彼の基準は
頭のいいやつしか認めない
人を傷つけることなど誰もがやっていること
という歪んだ人格
でもその根底にあるのは
いつか母親に認められたい、褒められたいという
子供ならだれでも持っている素直な感情だ

もう一人の加害者、少年Bの“下村直樹”も
別の形での親の犠牲者だ
映画にはないが原作の小説は
少年Bこと下村直樹の姉が告白する章で
その父親不在の家庭がすでにバランスを欠き崩壊していること
それ故そのストレスを息子を偏愛することでバランスを保つ母親
二人の姉と母親の過保護なまでに愛され
お手本となる男親がいない環境でそだった少年Bは
内気で目立たない普通の少年であること
何か障害があるとそれに立ち向かおうとせず
避けてきたため何かにつけて長続きしなかったこと
そのくせプライドだけは高く
友達と呼べる人間はクラスにいない
そんな彼の性格を見抜いた少年Aに狡猾に利用され
助けられたはずの森口先生の娘を
少年Aに対する意地と嫉妬で殺してしまったことなど
同じ愛情でも注ぎ方を間違えると
善悪の判断ができない気弱な人間に育ってしまうことがうかがえる


心と体のバランスがいちばんとれない
大人でもない子供でもない中学生という時期
世の中を変えるようなことが何だってできる自分と
世の中に対して何もできない弱く無力な自分が共存し
一人悩み葛藤するが、けっして答えは出ずに更に悩み続ける
そんな精神的に不安定なときに
ほんの些細な事がきっかけで暴走してしまう二人の少年

本作には現代社会が抱える様々な問題が
至る所に見てとれる

賛否両論、物議を醸しだしている作品だが
映画だけ観ずに原作の小説も読むと
また違った感想を持てると思うので
ぜひ原作も一読されることをお勧めする






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