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ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ 映画レビュー

悲しみを知らなければ本当の愛は唄えない



泣ける度★★★☆☆ オススメ度◎◎◎◎◎
ノーウェアボーイ
監督サム・テイラー=ウッド/脚本マット・グリーンハルシュ/原作ジュリア・ベアード
製作総指揮マーク・ウーリー、テッサ・ロス、クリストファー・モル、
ジョン・ダイアモンド、ティム・ハスラム
音楽ウィル・グレゴリー、アリソン・ゴールドフラップ


【映画解説】
1950年代のリバプールを舞台にザ・ビートルズに入る前のジョン・レノンを描く
厳格な伯母と奔放な実母との間で思い悩み、やがて音楽的才能を開花させていく
青春伝記ムービー


【映画レビュー】
20世紀が生んだ不世出のロックバンド “ザ・ビートルズ”
その数々の名曲のほとんどが
ジョン・レノンとポール・マッカートニーによるものなのは周知の知るところだ。

彼らの作る曲には“愛”を唄ったものが多いが
この映画を観た人にはその訳がわかるだろう
『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』
ビートルズを作る前のジョン・レノンの青春時代を描いた伝記映画だ!
ビートルズ解散後ソロになってもジョン・レノンが
ずっと“愛”を歌い続けたその理由が、本作には散りばめられている。


ジョンとポールのふたりの間に共通していたもの
それは両親、特に母に対する深い“愛”だろう
本作を観て初めて知ったのだが
二人とも早くに母を亡くしているのだ。

ジョンは本作で解るようにポール達とバンドを組んだ後の
17歳で母を亡くしているが
ポールはジョンに出会う以前の14歳の時、すでに乳癌で母を亡くしている。
“レノン&マッカートニ―”二人の作る歌に“愛”を唄ったものが多いのは
共通の哀しみをお互いに理解し合える二人の思いが自然と歌に表れたからではないか?
そして二人が生涯、追い求めていたものも“愛”だったのではないだろうか?

それは、二人が選んだパートナーに対する深い愛情表現にも顕著に表れている。
ジョンは7つ年上のヨーコに、ポールはひとつ年上のリンダに
妻であると同時に母としての“愛”を求めていたのではないか?


幼いころから両親の離婚により伯母の“ミミ”夫妻の下で育てられたジョン
音楽と言えばクラシックしか聴かず、躾に厳しい厳格な養母の“ミミ”と
ダンスやロックンロールが好きで自由奔放な性格の実母“ジュリア”
16歳の時、やさしかった伯父の突然の死で
葬儀に参列した“ジュリア”と11年ぶりに再会するジョン。

それまで気にもしていなかった実の母の存在が急に気になり始め
多感期のジョンはミミに内緒でジュリアの家を尋ねる。
姉のミミとの約束で、会いたくても会えずにいたジョンの突然の訪問を
心から喜ぶジュリアは、11年分の愛情を取り戻すかのように注ぎ込む。
そして生来陽気な性格のジュリアは生真面目なジョンに
ダンスやバンジョーの弾き方を教え
クラシックだけではない音楽の楽しさを教える。

ジュリアの影響でそれまで模範生徒だったジョンは
酒やタバコを覚え、髪をリーゼントにし
エルヴィス・プレスリー、チャック・ベリー、バディ・ホリーといった
アメリカのロックンロールに夢中になっていき
1957年3月、仲間とビートルズの前身になるスキッフルバンド
「クオリーメン」を結成する。
その年の7月6日にウールトンのセント・ピーターズ教会で行なった
クオリーメンのコンサートで友人の“アイヴァン・ボーン”の紹介により
生涯のゴールデンコンビとなるポール・マッカートニーと出会う。
その翌年バンドメンバーになったポールの紹介でジョージ・ハリスンが加入し
クオリーメンの人気は一気に高まっていく。
しかし、その年の7月15日、実母ジュリアが
非番の警察官が運転する車にはねられ亡くなってしまう。
ジュリアの死は、ジョンのその後の人生に大きな影響を与え
すでに母親を乳癌で亡くしていたポールとの友情を固める要因にもなったという。



幼いころから他の家とは違う育ての母との生活
多感期に再会した実母のやさしさに触れ
なぜ自分はこの母と暮らせなかったのか?
その二人の母の相反する“愛”に悩み苦しんだ末に
真実を知ろうともがき葛藤するジョン。
そして、その原因のすべてを知った時
ジョンを救ったのも、やはり二人の母の深い愛情だった。

ジョンの歌うすべての唄は、そんな二人の母の愛に応える
永遠のラブソングなのだ・・・


10代に実の母を失うという同じ悲しみを経験しているジョンとポール
オノ・ヨーコが原因で不仲になったと言われているポールとの関係も
二人は晩年、修復をしている。
「ポールの悪口を言っていいのは俺だけだ。他の奴が言うのは許さない」と
ハリー・ニルソンや秘書・メイ・パンにでさえ、
ポール・マッカートニーの悪口を言うことは許さなかったというジョン
またジョンは
「自分は人生のうちで2回すばらしい選択をした。ひとつはポール、もうひとつはヨーコだ」
とも言っているジョン

“レノン&マッカートニー”の名曲の数々が多くの人を魅了したのは
そんな、二人でなければ解らない深い悲しみから生まれた“愛”を奏でる メロディと詩だからなのだろう・・・


もし実母“ジュリア”がジョンにバンジョーを教えていなかったら
バンドのコンサートでポール・マッカートニーと出会わなかったら
ジョンの心の叫びを唄にしていなかったら
あの“THE BEATLES”は生れていなかっただろう・・・
ジョンがジュリアの音楽的な才能を引き継いでいたのは
本作を観れば誰もがうなづける。

ビートルズ世代はもちろん、そうでない世代でも
“THE BEATLES”の音楽が好きな人には
いや、好きではない人にもぜひ観て欲しい
真実の“愛”をテーマにした青春ムービーの傑作だ!



余談だが、私が大学2~3年の1978年ころ
美術学科の夏季研修で軽井沢にいったとき
旧軽井沢の道でジョンとヨーコにばったりと出会っている。

そのときはビートルズの熱烈なファンでもなかったし
まさか、その何年後かに射殺されるとも思っていなかったので
別段、サインも握手も写真も撮らずに「あっ、ジョン・レノンだ」と
ただ、眺めているだけだったが
今にして思えば、もったいない事をしたと
後悔している今日この頃だ・・・





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