レオニー 映画レビュー

普通の境遇からは天才芸術家は生まれない?



泣ける度★★★☆☆ オススメ度◎◎◎◎◎
レオニー
監督・脚本 松井久子/ 音楽 ヤン・A・P・カチュマレク


【映画解説】
世界的彫刻家イサム・ノグチを育て、自らも波乱の生涯を生き抜いた
アメリカ人女性レオニー・ギルモアを描いた伝記映画


【映画レビュー】
『レオニー』彫刻家、画家、インテリアデザイナー、
造園家・作庭家、舞台芸術家の肩書を持つ20世紀を代表する芸術家
“イサム・ノグチ”の母親“レオニー・ギルモア”の物語である。

作家で教師だった彼女は
若いころから人と同じであることを嫌い
変人扱いされても、頑として主張を譲らなかった
自立心旺盛な典型的アメリカ人女性だ。

1873年6月17日、ニューヨーク、マンハッタンの
イースト・ヴィレッジで生まれ
けっして裕福ではない労働階級の家で育った彼女は
名門ブリンマー女子大学を卒業し教鞭をとっていたが
編集者になりたいという夢を捨て切れずにいた。

ある日、「編集者求む」という新聞の三行広告を見て訪ねた先で
日本から来て英詩の勉強をしていた“ヨネ・ノグチ”野口米次郎と出会う。
彼の詩の才能を認めたレオニーは、彼に協力を求められ、
“ヨネ”と共同作業で詩や小説を発表し
野口米次郎は一躍、米英文壇で脚光を浴びることになる。
ヨネの書く詩への感動はいつしか恋愛感情になり、やがて二人は結ばれる・・・

だが日露戦争が始まり、反日感情が高まっていく米国に住みづらくなったヨネは
妊娠しているレオニーを置いて日本へ帰国してしまう・・・
悲嘆にくれるレオニーは母の勧めでカリフォルニアへと移り
男の子を出産する
ヨネへの未練を断ち切り、ひとりで子供を育てていく決心をしたレオニーだが
日本人への人種差別が激しくなる米国で子供の将来に不安を感じ
未練を断ち切ったはずのヨネの再三の誘いに応じて
止める母を振り切って、日本に行くことを決意する。

横浜港で3年ぶりにレオニーと再会したヨネは
始めて見る息子に“イサム”と名づける。
二人に住まいを用意し、英語を教えて暮らしていけるように
3人の生徒を用意してくれていたヨネに
レオニーはとても感謝し、慣れない日本の暮らしになんとか馴染もうと
懸命に日本文化を勉強していく
しかし、ヨネに正式な日本人の妻がいること知ったレオニーは
激怒してヨネが用意してくれた家を出る。
その後、小泉八雲の妻“セツ”と知り合い、彼女の協力を得て働きながら
なんとか子育てを頑張るレオニー
だがハーフのイサムは日本でも差別を受けているのか
学校へ行きたがらず、絵ばかりを書いている。
そんな息子のために家を建てることを決意するレオニーは
その家の設計をわずか10歳のイサムに任せる。
戸惑いながらも母のためになんとか設計し
腕のいい大工たちのおかげで立派に完成した家には
イサムが母のためにプレゼントした丸窓があった。
その窓を開けると、まるで絵画のように富士山が美しく見え
イサムの芸術的才能を確信したレオニーは
息子を芸術家として育てていこうと心に誓う・・・


と、粗筋だけでもこんなに長くなってしまうほど
レオニーの半生を映画は淡々と綴っていくので
イサム・ノグチにまったく興味がない人たちには
少し退屈に感じてしまうかの知れない?

ただ、世界的に有名な芸術家とその母の人生が
けっして平坦ではなかったこと
時代に翻弄されたとはいえ、ハーフゆえに受けてきた心ない差別
母の願いを受け、自ら居場所を求めて単身渡米した青少年時代
医学部で医者を目指していた彼の人生を
母の強い希望で再び芸術家への道へ変わらせたことなど
数々のすばらしい彼の作品が生れたその訳が
彼の幼少期から青年期への母との歩みの影響を
色濃く受けていたことなどが垣間見られ
イサム・ノグチのファンはもちろん
そうでない人達も涙してしまうに違いない。

映画の中のセリフにもあるように
芸術には国境も限界もない!ということが
習慣も価値観も違う異国で生活し
さまざまな壁にぶつかって
戸惑いながらも生き抜いてきた母子が
芸術家という道を選択した、ひとつの理由だろう。

映画の冒頭から時折インサートされる
石を刻み続ける彼のミノとハンマーの響きが
彼の人生のあらゆる思いを刻みつけているようで
観ている私たちの心に、ジワーッと効いてくる。

在米日系人がとても生きづらかったであろう米国で
大正から昭和へと二つの世界大戦の中を生き抜いてきた
ときには繊細にときには力強い
日本人の父とアメリカ人の母から受け継いだ血ならではのパワーが
イサム・ノグチの作品には漲っているのではないか?と
この映画を観て強く感じた。


血筋や才能だけではなく
偉大な芸術が生れる背景には
その芸術家が育った環境や経験してきた
辛さ、悲しさ、寂しさ、喜び、
そして、それらをすべて包み込んでくれるような
無償の愛情などが大きく影響するのだということ
を、知る意味でも
お勧めしたい作品だ・・・





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